1. 重力とは何か
重力は、物体の質量によって時空が歪むことで生じます。
ニュートン力学では「物体が互いに引き合う力」とされていましたが、
アインシュタインの一般相対性理論では、質量が時空を歪め、その歪みに沿って物体が動くと説明されます。
私たちが「地球の重力で引き寄せられている」と感じるのは、実際には地球が周囲の時空を曲げているためです。
地球の表面を歩く私たちは、曲がった時空の中をまっすぐ進もうとしているにすぎません。
2. ブラックホールは“時空の極端な歪み”です
ブラックホールは、極端に高密度な質量が一点に集中した天体です。
その結果、時空の歪みが非常に大きくなり、光の進む経路(光線)さえも内側へ曲げられます。
このため、一度内部に入った光は再び外へ出ることができません。
地球をブラックホールにしたら?
地球の質量はおよそ \(5.97 \times 10^{24}\) kg です。
この質量をそのままブラックホールに変えた場合、シュワルツシルト半径はおよそ 9mm になります。
つまり、地球全体をビー玉ほどの大きさにまで圧縮すると、光すら脱出できない天体になるということです。
このときの密度は、水の約 \(10^{30}\) 倍、原子核よりもさらに高密度です。
この「9mm」という数字は、ブラックホールの異常さを端的に示しています。
ブラックホールは巨大な星だけの現象ではなく、十分な密度さえあれば、どんな質量でも成立することを意味しています。
ブラックホールの重力が「極端」だとするなら、私たちが毎日感じている1Gはどれほどの質量によって生まれているのでしょうか。
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3. 事象の地平線(Event Horizon)
ブラックホールの境界面を「事象の地平線」と呼びます。
この面を境に、光を含むあらゆる情報は外部へ到達できなくなります。
では、この“光さえ逃げられない歪んだ時空”は、実際にはどのように見えるのでしょうか。
NASA のスーパーコンピューターで作成されたシミュレーション動画をご紹介します。
4. 光が逃げられない理由
光は質量を持ちませんが、重力による時空の歪みには従います。
ブラックホールの事象の地平線より内側では、時空の歪みがあまりに強いため、
光の進むすべての経路が内向きになります。
これが「光が逃げられない」物理的な理由です。
5. ブラックホールの内部
事象の地平線の内側では、重力が中心(特異点)に向かって無限に強くなると予測されています。
この領域では、現在の物理法則(一般相対性理論)では現象を正確に記述することができません。
量子重力理論の確立が、この領域を理解する鍵になると考えられています。
まとめ
ブラックホールとは「重力によって時空が極端に歪んだ結果、光すら脱出できない領域」のことです。
その中心には、現代物理学がまだ説明できない未知の構造が存在すると考えられています。
・NASA / Goddard Space Flight Center Scientific Visualization Studio
Black Hole Accretion Disk Visualization
NASA Black Hole Visualization Takes Viewers Beyond the Brink
・NASA “Black Hole Accretion Simulation”(YouTube)


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